生物の定義 - グローリア国際知財事務所

生物の定義

 

またまた、私の十八番の面白話をひとつ、披露してみようと思います。

私は大学で生物工学を専攻していたのですが、3回生の頃、教授陣のうちのツチド先生という教授が、学生達に対して、「『生物』とは一体何でしょう?」という質問を投げかけたことがありました。

学生達は、この突拍子も無い質問に、誰しもが答えたくないと感じ、下を向いていました。例にもれず、私も「どうか私を当てないでくれ。」と祈るような気持ちで、机の表面に目をやっていました。

ところが、そういう時に限り、不運にして、当てられてしまうものです。

ツチド先生は、名簿を眺めながらおもむろに、「それでは、ハシヅメさん、答えてみてください。」と私を指名されました。

しかし、図書館に通うのが好きだった私は、最近読んだ本の中で、著名な生物学者が、「生物とは自己複製を続けながら変化し続ける生命体です。」というような、正確な文言は忘れてしまいましたが、その様な内容のことを記載していたことは、その著書を読んで殆ど感銘を受けたので、ちゃんと覚えていました。

それで、これをこのまま「私の回答」として借用するには、「立派過ぎる」のは十分承知の上で、でも他の身の丈に応じた回答は思いつかなかったため、「生物とは、自己複製を続けながら変化し続ける生命体です。」との答えを、教室内で披露しました。私自身で創り上げた答えでは全くなく、功名な生物学者が語っていた内容のパクりです。

それを聞いたツチド先生は、一瞬うろたえたような様子を見せたあと、「本質をついた素晴らしい回答です。いや、実に素晴らしい。」と絶賛し始めました。

「まずいことになった。」と私は少し青ざめました。

クラスメイト達は、宇宙人的存在だった私が発した、不思議な回答と、ツチド先生の様子を見て、まるでこの世の光景とは思えない、とでも言いたげな様子で驚いて見ていました。

その後、どういう訳か、度々、教授陣のうちの複数の先生が、学生達に対して、同じ質問を繰り返しし始めました。

きっと、教授陣の会議で、「今年の学生は、何やらユニークな回答をしていたよ。君等も試しに聞いてみたらいいよ。」みたいな会話をしたのではないでしょうか?

教授陣が入れ代わり立ち代わり、「生物の定義を答えてみてください。」という質問をする度に、宇宙人的女子が以前に発言していた不思議発言をちゃんと記憶していた他の学生達は、私と同じように、「生物とは、自己複製を続けながら変化し続ける生命体です。」という、私が書籍からパクって来た回答を、さらに借用して、同じ回答を繰り返ししていました。

その度に、教授陣は、「ほう。完璧な回答です。」と、感心した様子をしていました。

しかし、しばらく時が経って、もうこの質問はされなくなりました。

私が推測するに、きっと教授陣の会議で、「どうも今年の学生らは、どの子も同じ回答しかしよらんね。増殖した細胞みたいに、まったく同じ事しか答えへんでな。」みたいな話を、無駄話的に共有したのではないでしょうか?

これも、クラスメイト達には内緒にしていましたが、私にとっては面白すぎる話なので、散々、英会話のときの話のネタとして、使い倒していました(^^)

生物は本来、「変化」に強い生命体のはずです。だからこそ、環境が変わっても、それに応じて進化をし続け、今も存在し続けているのです。

何か環境が合わないと感じた際には、環境の側を自分に合わせようとするのではなく、生物である自分の側を変化させて、環境に合わせようとする方が、きっとはるかに簡単でしょう。

その様に考え、極力、一つの考え方に縛られずに、必要が生じれば柔軟に考えを変えて、課題に対応することを心掛けて過ごしたいものです。

「変化」が座右の銘です、と言っていた、一回り年上の弁理士仲間がいましたが、その座右の銘の奥深さが、今やっと、私にも少し、理解できるようになってきた気がする次第です。

 

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