意匠保護における審査主義と無審査主義 - グローリア国際知財事務所

意匠保護における審査主義と無審査主義

日頃、特許の権利化を主に扱っていると、出願が特許庁等の行政機関による審査過程を経て、やがて登録されるのが、当たり前のように思いがちですが、他の法域においては必ずしもそうではありません。

例えば、意匠法では、(i)実体審査が行われ登録によって権利が発生する審査主義を採用している国々と、(ii)無審査で権利が発生する無審査主義を採用している国々と、があり、どちらが一般的とも言えないです。

例えば、審査主義をとっている国としては、我が国のほか、米国、韓国、台湾などが挙げられます。

審査の過程を経て登録される場合、権利の安定性が確保されるという点でメリットがありますが、一方で、出願から登録までにかかる時間が長くなり、流行性の高い意匠が適格に保護されないおそれや、出願費用が嵩んでしまうなどのデメリットがあります。

無審査主義をとっている国々としては、韓国(ただし、一部の物品についてのみ。)や、欧州共同体意匠規則などが挙げられます。

無審査主義のなかでも、行政庁の登録によって権利が発生する制度のものと、そもそも登録することなく権利が発生する制度のものとが、あります。

欧州意匠共同体規則では、その両方の制度が併存しています。

無審査主義で意匠が保護される場合、迅速に意匠の保護が開始され、流行による影響を受けやすい意匠を適格に保護出来る点や、出願費用を(審査がされないぶん)低く抑えることが出来る点に、メリットがありますが、一方で、権利の安定性に欠け、制度利用者の調査負担が大きい点などのデメリットがあります。

このように、審査主義と無審査主義は、トレードオフの関係にあり、どちらがよいとも言い切れないように思います。

我が国でも、無審査主義のメリットを鑑みて、これまでにも意匠法に無審査登録制度を導入することについて、意匠制度小委員会などでテーマとして取り上げられ、検討された事がありますが、直ちに導入できる環境が整っていないということで、見送られた経緯があります。

今後、どの様に法制度が移り変わっていくかは、注目しているところです。

 

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