従属請求項を多数作っておく意義 - グローリア国際知財事務所

従属請求項を多数作っておく意義

特許出願原稿案を受け取ったときに、「何故、このように沢山の従属請求項を書いてあるのだろう?」と疑問に思った、という話を見聞することがあります。
また、発明者にとっては当たり前の様に思う内容が、弁理士によってクレームアップされている様な場合に、発明者が、「これをクレームに書くことの意義がわからない。」と感じることがあるそうです。専門家である弁理士の中にも、「従属項を沢山用意しても、あまり意味がなさそう。」と考えている人々も多く居るのが現状です。

そこで、今回は、従属請求項を多数、「特許請求の範囲」のなかに記載しておくメリットについて、触れてみたいと思います。
日本の審査の場合、審査請求がされると、特許請求の範囲に記載された全ての請求項(発明)について、審査官による特許可否の審査がされます。審査の結果、特許を付与するに値しないと判断がされた場合には、何故その請求項について、審査官が特許を与えることが出来ないと考えるかの、根拠となる引用文献を、提示してくれます。
これは、審査官の努力義務として扱われておりますし、もし万が一、具体的な引用文献を提示しないまま拒絶理由が通知されたような場合には、審査官にコンタクトを取ることで、具体的な引用文献を挙げてもらうように促すことも出来ます。

したがって、拒絶理由通知を受け取った出願人は、審査結果を見ることにより、「その従属請求項であれば、拒絶理由を克服できそうか?」を検討し、拒絶理由通知に対する応答案を、次の戦略として仔細に練ることが出来ます。すなわち、各請求項は、「特許化出来るか否か?」の可能性を探るための、道しるべとなるものなのです。だからこそ、複数の請求項を用意しておくことに意味があるのです。
ただし、請求項の数が増えるほど、審査請求時に必要な、特許庁へ支払う費用が増えるので、費用対効果も考える必要があります。
しかし、弊所のお勧めとしては、出願時には、権利化を希望する発明を、少し多くなってもよいので複数記載しておき、審査請求時(通常は、出願から3年後。)に、その時点で真に必要な請求項(発明)に絞って、審査請求を行うことです。

一方で、米国や欧州への出願では、請求の範囲(クレーム)に記載出来る請求項(発明)の数に制限があるため、出願の時点で、どの発明をクレームアップするか、検討する必要があり、これが少し厄介です。しかし、これに対処する方法として、クレームの記載方法を少し工夫して、複数の選択肢を含めるようにしておく、シャドークレームを用意しておくなど、様々な対応案が考えられます。
そうは言っても、特許を受ける権利を有するのは、原則として発明者様なので、弁理士とよく相談して、十分納得をしたうえで、クレームアップする発明を選択するのがよいと思われます。

特許を取得することは、発明者様にとっては、ある種の「名誉の証」の様なものですので、発明者様が意図しないような内容の請求項を用意するのは、やはり望ましくないように思っています。

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